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    asasuzuki

    世界をそっと切り取るように

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    asasuzuki

    TRAINING解像度を上げる話 1H2774字「なあ、お前さあ。絶対売れねえモンってなんかある?」

     手が伸びる。当たり前のように人の目の前に置いてある野菜スティックをバリバリと食べながら、目の前の男――ディーノは俺に問いかけた。ジェノヴァ大学食堂。午後2時47分のこと。
     ディーノ。ジェノヴァ大学の問題児。ディーノ・イルデブランド・フィノッキアーロ。勉学をゲームとしか思ってないタイプで、往々にしてなにかしらをゲームとしか思ってないやつっていうのはどういう場所だったとしても優秀なのが常だ。ディーノもその例には漏れない。飛び級お得意の天才なんて触れ込みで、学内では知ってる奴の方が多かった。

    「売れないものったって」

     ああ、なんらかの思考実験に付き合わされてるんだろう、とか、モルモットその1でしかないんだろうってことはわかってたつもりだった。
     でもなけりゃ、優等生の秀才様がわざわざ特筆することもないような――よくも悪くもない、ただいるだけの学生に話しかけるようなことはしなかったろうと思うし、今となってはそれは間違いなかっただろうな、と思ってる。これは、間違いなく。
     最初から最後まで、あいつは俺の名前を呼ばなかった時点で。間 2825