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    asasuzuki

    世界をそっと切り取るように

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    asasuzuki

    TRAINING動きにくい話 1H3492字「何をお探しですか?」

     珍しく休日らしい休日で何をするか悩んで、服でも買いに行こうかな、と思っただけだったから。回答には少しだけ時間が必要だった。

    「なんかいい感じの――おすすめとか、ありますか? 俺、服とかそういうの疎くて」
    「お兄さんかっこいいのに着飾らないと勿体無いですよ〜?」

     ははは、と短い笑いで誤魔化した。休みの日の過ごし方のおすすめを聞いた方がよかったかもしれないけれど、店員の女の子が楽しそうに話をしていたからそれでいいか、と思った。そもそも、多分――憶測でしかないけれど。俺、もしかすると一人苦手なんだな、なんてぼんやりと考えながらジャンパーに袖を通す。

    「派手じゃないですか?」
    「ワッペンくらいで派手なんて言ってちゃ、このあたり歩けなくなっちゃいますよ。今シーズンの新作で、国内外の作家とコラボしてるんです。このワッペンはイタリアのかなり若いデザイナーからの提供で、――」

     このあたり。ニューヨーク、ロウアー・マンハッタン。ダウンタウン。
     元、世界中の金融の中心地。いまは、それ以上の意味を持たざるを得なくなった街。国内外のファッションブランドも出展するアメリ 3590

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    TRAINING解像度を上げる話 1H2774字「なあ、お前さあ。絶対売れねえモンってなんかある?」

     手が伸びる。当たり前のように人の目の前に置いてある野菜スティックをバリバリと食べながら、目の前の男――ディーノは俺に問いかけた。ジェノヴァ大学食堂。午後2時47分のこと。
     ディーノ。ジェノヴァ大学の問題児。ディーノ・イルデブランド・フィノッキアーロ。勉学をゲームとしか思ってないタイプで、往々にしてなにかしらをゲームとしか思ってないやつっていうのはどういう場所だったとしても優秀なのが常だ。ディーノもその例には漏れない。飛び級お得意の天才なんて触れ込みで、学内では知ってる奴の方が多かった。

    「売れないものったって」

     ああ、なんらかの思考実験に付き合わされてるんだろう、とか、モルモットその1でしかないんだろうってことはわかってたつもりだった。
     でもなけりゃ、優等生の秀才様がわざわざ特筆することもないような――よくも悪くもない、ただいるだけの学生に話しかけるようなことはしなかったろうと思うし、今となってはそれは間違いなかっただろうな、と思ってる。これは、間違いなく。
     最初から最後まで、あいつは俺の名前を呼ばなかった時点で。間 2825