夏の贈り物「虫の知らせだったのね」
たまたまマンションを訪れた母親が、出迎えた健司の様子を見てため息をついた。
「別にただの風邪だ」
「真っ赤な顔して何言ってるの」
玄関で母親に無理やり回れ右させられ寝室まで背中を押される。
もうろうとした頭でついこの前も幼馴染と同じ事をしたなと、妙な既視感に襲われた。立場は逆だったが。
「熱は?」
「さぁ?体感38度くらいか」
「ほんと雑なところ相変わらずね。彰良くんも大変そう」
母親が呆れたように言いながらリビングの棚からめざとく救急箱をみつけて体温計を取り出した。
「なんでそこで彰良の名前が出てくるんだよ」
ベッドに腰掛けながら母親から体温計を受け取る。
「また届いたから。高槻さんから御中元のカルピス。一本冷蔵庫に入れておくわね」
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