淡く甘い光 上手く、不意打ちで奪えたと思う。
触れた体を離してようやく、身に起こったことが理解できたようだ。口を開けては閉めて、言葉を探している。戸惑いの中に、特別を期待するほのかに甘い匂い。堅物なこの人からもそんな匂いがするのかと思った。
へへ、と彼が好きな人懐こい笑みを浮かべると、意を決したように名を呼ばれたから、すみません、と先に謝った。
「してみたかっただけなんです」
どんな反応をするのか、興味があった。
俺の一挙一動に、喜んだり笑ったり悲しんだり寂しそうな顔をしたり拗ねてみたり。あまりにもいろんな顔を見せてくれるものだから。
数秒前に浮かべた甘い期待の光はすっかり消え、傷ついたように濁り、けれどほのかに安堵も混じっているように見えた。引き攣る頬を薄く笑って誤魔化し、もうするなと静かに言う。
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