番外 セストルという男(裏)「はい、チェックメイト」
「うっ」
にこやかに勝利宣言をする男と、苦々しい顔をして決着のついた盤面を眺める男。
主人不在の屋敷で、二人はなぜかチェスに興じていた。
「だんだん攻め方が雑になってきてるよ。まだ最初の方が手強かったかな」
「くそ……、もう一回、もう一回です!」
負けを認めたくないのか、ザンニは悔しい顔を隠さずに再戦を申し込んでくる。それを涼しい顔でセストルは受け入れると、静かに駒を元の位置に戻していく。
「そんなに悔しがるなって。僕には及ばないけど、かなり強い方だよ?」
「だとしても、貴方に負けっ放しなのは気に食わないんです」
「負けず嫌いだなぁ。勝利に執着してると損するよ。ときには敗北に甘んじ、機を伺うことで、大局的な勝利を得られるのさ」
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