番外 きせきのちから それは奇跡と呼べるような力だった。
――貴方がまだ赤ん坊だったころ、その力が私を救ってくれたのですよ
大好きな母からそう教えられたとき、彼は誇らしく思った。
過去に類を見ないほどの治癒魔法。たとえ死に頻していようとも、尊い命を救い出すことのできる秘術。
誰もが認めるその力の希少さは、幼い彼にとって自分が特別であることの最たる証左だった。
「この力で、僕がお父様とお母様をお守りします!」
己を万能だと信じて疑わなかった少年は、無邪気にもそう言い放った。
けれど、その力は彼にとって、忌まわしいものへと変わったのだ。
あの瞬間から。
――キリシェ坊ちゃん、残念ですが……いくら貴方の力でも、死人を生き返らせることはできません
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