自給自足用メリバ風味テキスト*
強い光を最後に、記憶は完結していた。
*
「寿命譲渡、かあ」
モモはバスタブの端に引っ掛けていた両足を引っ込めて、僕が入れる隙間を作る。水の中で色づいた爪が、鱗のかけらみたいにきらめいていた。たっぷりと張られた湯がくゆりと波打つ。
彼がぽつんと落とした単語は、さきほどまでリビングで見ていたニュースの中でしきりに取り上げられていた話題だった。
「興味あるの。僕たちには無縁の話だと思ったけど」
寿命譲渡。その名の通り、人の寿命を人に譲ることができる仕組みになっているらしい。譲った年数だけ、その人の寿命が延びる。海外ではもう制度化されているところもあるらしく、国民でなくても申請すれば通る、ということは最後のほうに軽く説明されていた。
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