確実に叶う幼子の願い事「じゃあみんな、好きな色の紙を選んで願い事を書こうね」
パチパチと大きな目を瞬かせ、ふくふくとした頬を引き締めながら蘭丸は保育園の先生の言葉にしっかりと頷いた。
鮮やかな色紙が並ぶ机の前で蘭丸はむむっと真剣な顔をする。
これは重大なミッションである。年に一度の七夕の日。長方形に切られた色紙に願い事を書いて笹に吊るすのだ。
きゃっきゃと楽しそうな友達の輪から抜け出した蘭丸は黄色の短冊を選び、赤いクレヨンを握りしめる。
真剣な願い事なのだ。誰にも邪魔されず、蘭丸一人で書くべきだと思ったのだ。
だから蘭丸はポツンと隅っこで赤いクレヨンを握りしめて深呼吸をする。そして慎重に丁寧に、ゆっくりと字を書き出した。
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