『たいよう』が見える場所真っ白な雲が、もくもくと広がり太陽の姿を隠していく。
『たいよう』が見えない。
それだけで、どうしようもなく寂しい気持ちになるようになったのは、一体いつからだろうか。
かつては、光が届かない海の底をずっと漂っていたというのに。地上に出て、太陽の光を浴びてからというもの、その光を浴びることが当たり前になってしまったのだ。
どこまでもどこまでも空を覆っていく、白い雲。細めた目で空の様子を眺めてから、ぼくは噴水の中へと入る。そして、ゆっくりと身体を後ろに倒した。
身体を沈めていくと広がる、波紋。水音を立てながらぼくは、ぼくの全てを水に沈めた。
身体を浸していく水は、未だ冷たい。雪が溶け、水浴びが出来る季節に近付きつつあるというのに、だ。
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