土曜日(仮題)土曜日、5:40。
暖かな日差しがカーテンの隙間から差し込み、ベッドとフローリングに優しく降り注ぐ。
その奥、つけっぱなしの蛍光灯に照らされ、男は壁に背を預けて座りこんでいた。
頭は力無く垂れ、その瞼は閉じ、投げ出された手は指の一つも動かない。
浅く、ひどく緩慢に繰り返される呼吸が、かろうじてこの男が死んではいないことを示していた。
………
さわさわと、窓付近まで伸びた木々の葉が風と遊び、木漏れ日を揺らす…
しばらく動きのなかった男の眼瞼が、不意に震えた。ゆっくりとそれが開かれ、漆を塗ったような黒い双眸が覗く。しかしそれも、半分ほど開いたところで、静止してしまった。
黒い瞳は焦点があわず虚ろに揺らぎ、そこに意思はおろか生気がなかった。
955