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    Harumachi1231

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    Harumachi1231

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    ##金子ヤヨイ

    金曜日(仮題)金曜日、21:45。
    金子ヤヨイはふらふらと自宅のドアに鍵を差し込んだ。

    すっかり重たくなった腕でドアを開く。
    いつもならとっくに家に着いて、更にいうなら寝る準備までしている時間帯だ。
    仕事が早く片付いた祝いに、先輩に飲みに行こうかと誘われてホイホイついていったのがまずかった。先輩は酒癖が悪く、酔ったが最後振りほどくのに相当時間を食ってしまったのだ。

    先輩にはいつもお世話になっているし、お土産にアイスも頂いてしまったので、怒りは起きない。むしろ途中で飛び出してしまって申し訳ないと思っている。
    暗い部屋に明かりを点すと、小さなキッチンとシングルベットが金子を出迎えた。

    ただ、無理をして自分の正体を露呈するわけにはいかないのだ。

    金子ヤヨイは人間ではない。
    金霊という、いわゆる妖怪の類である。
    それをこうして人間に化けて隠してから何年目になるだろうか。

    『人外に人権はありません』

    そう、誰かに言われて。
    そもそも人間に視られることのほうが少なかった自分にとって、世界が一変するような出来事があった気がする。
    しかしその詳細はというと、とにかくここに居続けなければという一心から習得した擬態訓練や人間社会の勉強に流され、今も思い出せないでいる。

    そして幸運にも成り行きで、人間の姿で教師として学校に居着けることになったわけだが、慣れたとはいえ無機物同然だった自分が24時間人の姿を保つのは至難の業で…

    おっと、いけない。

    アイスを仕舞わなくてはと、ベッドへ引き寄せられた足をキッチンに向けたところで、かくりと視界が傾いた。
    バランスを取ろうと足をずらしたが無駄で、上体から壁に激突しそのままズルズルと床に崩れ落ちる。
    多少衝撃は感じたものの、その痛みはすでに金子の脳には届かなくなっていた。

    ああ、もう。

    四肢はもはや鉛のように重たく、指が一本も動かせない。殆ど機能しない視覚が、袋から飛び出した棒アイスの箱を掠めーーー

    そして世界が暗転した。
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