リベラくんとモカラの出会い 義父の酒屋の手伝いをしていたある日のこと。いつも通り品出しをし、陳列棚に並べられている酒瓶の向きを揃えている最中に、ざりと砂を踏み締める音に視線を向けると、見覚えのない風貌の客に自然と目が惹かれた。
オニキスのように艶がある黒髪に、同色の毛色を持つ獣の耳は兎のように長い。異国情緒豊かなクガネでも中々見かける事のないヴィエラという種族なのだろう。モカラの尻尾は興味深げにゆらりと靡いた。
「これを」
「承りました、少々お待ちください」
カウンターに立っていた義兄へと紙切れを渡し、奥へ引っ込んだ背を見送ったまま、手持ち無沙汰そうに立ったままのヴィエラへと近寄ると、軽く瞬きをしてこちらを見るものだから、少し微笑ましくなった。長さも種族も違うが、獣の耳を持つ者はクガネでは珍しいのだ。
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