「我慢」 主、我慢ですよ。
長谷部は私によくそう言ってあやしてくれた。私が他の審神者や政府の役人に人見知りを発動させた時、転んで膝をすりむいて泣きそうになった時、夕ご飯が待ちきれずつまみ食いをしようとした時。
全部全部甘い思い出だ。長谷部は、私よりたくさんたくさん長生きしている長谷部は、私を導いてくれた。
そんな長谷部に、私は恋をした。
ある時恋仲の刀剣男士と審神者を見かけ、それが羨ましくて「恋ってどんなものなの?」と長谷部にしつこく問いかけた。すると長谷部は私のほっぺたに優しくキスをして、「今は、ここまでで、しまいです」と言ったのだ!
驚いた。長谷部の唇の柔らかさがずっとほっぺに残っている気がして、ごしごしと長谷部にキスされた場所を何度も何度も手でこすったし、顔も洗った。それでも記憶から消えなくて、いつの間にか私は長谷部を自然と目で追うようになった。
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