傘を広げたひとりとひとり一
──マルガリータを頼む……作り方は知ってるか? そうか、それなら思い切り白くなるように作ってくれ。
済まん済まん、君を困らせるつもりじゃなかったんだ。白くしてくれと言ったら君は、アルプスまで雪を取りに行きそうだ。パリじゃそんなに積もらないしな。
何だか、寂しい色合いの酒が呑みたくなったんだ。白くて向こう側がよく見えない酒ってのは、何となく寂しくないか? 透明な酒よりもな。
強いことには変わりない?
確かにそうだ。……君は時々、含蓄のあることを言うよな。事実を言っただけ? それなら、着眼点がいいってことだ。
うん。なあ、セニョリータ。ちょっとの間、アヌビスみたいな君の番犬を借りたいんだが……。
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