【ロミオにシンデレラ】
「ねぇ、僕と生きてくれる?」
ベッドの中から類が問うてくる。まるで、明日の天気でも尋ねるように。その類の隣を離れて丸テーブルの前に立っていたオレは、コップに注いだばかりの水を一口飲んで考えた。
問いの内容は単純だ。返答も、おおまかに三種。しかし、情事の後に何の前振りもなく発せられた意図が分からずに振り返ると、類は気だるそうに前髪をかきあげてこちらをじっと見ていた。……意図は読みとれそうにない。心の中で白旗をあげるのに合わせて軽く片手をあげたオレは、コップを手に類の所へ戻った。
「いきなりなんだ?」
「いきなりでもないさ。僕は──ずっと考えてた」
「…………」
安易な相づちを打ってはいけない気がして、黙ってコップを差し出す。類はゆっくりと一糸まとわぬ身体を起こしてそれを受け取り、こくり、と喉をならしたが──薄闇に陰ったシトリンの瞳はずっとオレに向けられたままで。無言で答えをせっついてくる。
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