優しい目隠し「ありがとうっ、名探偵さん!」
喜色に弾んだ声と共に腕を取られて、頬に押し付けられた柔らかな感触がそうと気付く前に離れていく。恥ずかしそうにはにかんだ表情に、今時の子どもは随分とマセている、などと感心したのも束の間。
ずるい卑怯だなんでコナン君だけ、とわいわいぎゃあぎゃあと騒ぎ立て始める子どもたちと、一人だけ無関心そうに肩を竦める存在にハハハと乾いた笑いが洩れる。
少年探偵団へと依頼された、家出猫の捜索。無事に発見したその子を飼い主である少女へと引き渡して、解決に喜んだ矢先の出来事だった。
確かに探したのは少年探偵団のみんなで、コナン一人の功績ではない。引き渡す場所まで猫を抱えていたのがコナンで、少女に直接返してあげたのもコナンで、最初に見つけたのもコナンだったから──そんな積み重ねと、数日ぶりに飼い猫に会えた喜びが極まったゆえの結果だろう、とこの時のコナンは楽観的に考えていた。
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