ドカ食い閣下 チーズケーキとフォンダンショコラ。
ミルフィーユにフルーツタルト。オペラ、モンブラン。
それから、桃のコンポート。アールグレイのシフォンケーキ。ブランデーで浸したサヴァラン。苺のショートケーキ——
机上で皿の縁と縁が重なり合うほどに置かれたスイーツ群を見て、フロイトは笑いながら呟いた。
「すごいな。ACの見本市みたいだ」
『それを言うなら、〝ビュッフェテーブルのようだ〟、では?』
フロイトの見当違いの発言を、向かい側に座るスネイルが指摘する。しかしそれはスネイルの口からでなく——それも当然で、いまスネイルは菓子を平らげるために口を動かし続けているからだ——、フロイトのすぐ傍に置かれたタブレット端末によって無機質な文章として表示された。スネイルはちらりとフロイトを見た後、レモンクリームがたっぷりと乗ったスポンジケーキに視線を戻して食事を再開する。その様を、フロイトは皿で狭くなっている机の上で頬杖をつきながら眺めていた。
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