(moiw2023当時の書きかけ)赤色の花言葉は愛の告白らしい。しとしと、雨粒が張り付く窓をぼーっと見つめる。確か朝ニュースで見た天気予報では降水確率80%だった。だから、降って当たり前なんだよな。でも、今日は。
「傘、忘れた」
「……百々人。レッスンに集中しろ。」
ほんの少し怒気を帯びた声。振り返るとマユミくんが腕を組んで立っていた。
「今までに経験したことのない曲だから、いつもより丁寧にレッスンをしなければいけないだろう?天気のことは、今は気にするな」
正論だ。彼の言っていることは至極真っ当。でも真っ直ぐすぎる。真っ直ぐすぎて、少しだけ曲げたくなる。
「マユミくんは、僕が『傘を忘れたのもレッスンのうち』って言ったら、どう思う?」
「……というと?」
床に散らばった歌詞カードを見つめる。一番Aメロ。出だしも出だし。
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