共に散る華*
けほっごほっ
乾いた咳を繰り返す。喉元にある違和感に眉を顰め、迫り来る吐き気に胸を強く抑えた。喉元に留まる何かを押し止めて飲み下してしまえればどんなにいい事か。実際はそんな事はできず、強制的に吐き出された『それ』に陰鬱な気持ちになる。
まるで闇夜を映したかのような真っ黒な花弁。毒々しいとさえ感じる花びらが散ったベッドの上を一瞥して重い溜息を吐き出した。
『嘔吐中枢花被性疾患』
――通称.花吐き病
アルハイゼンがこれを発症したのは一週間程前の事であった。脈絡もなく唐突に訪れる吐き気と共に堪える事も出来ないこの症状を、誰にもバレない様に細心の注意を払ってきた。特に同居人にだけは知られる訳にはいかなかった。
そう、彼にだけは知られてはいけない筈だった。
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