一問一答ネタ「顔写真」「おかえりなさい。」
ジャンの忙しい一日の中で、最も心が安らぐ瞬間だった。仕事で時間に追われる日も、無理難題を抱えながら明日に繰り越す日も、心無い言葉を浴びせられる日も、いつだってジャンの心に平穏を与えてくれる。
それが、妻の「おかえりなさい」だった。
ジャンはその黒髪を抱き寄せ彼女の額に口づける。
少し照れくさそうに身をよじったが、ミカサも同じように小さな口づけをジャンの下顎へ残した。
「夕飯は食べていないでしょう?座っていて。今、温めなおす。」
ミカサは長い髪を翻し、ジャンの手からすり抜けた。ジャンはもう少しこの甘い時間を享受していても良いと思っていたが、夫婦となって十年近い月日が経てばこんなものだろう。
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