休日プランニング「休みが欲しい」
そう言って男は書類まみれの机に突っ伏した。決して誰かに向けて放った言葉ではない。むしろ自分を慰めるための意味のない呟きだ。それを分かっているのだろう。返ってくるのは正面からカタカタとキーボードを叩く無機質な音のみ。
「休みが欲しい」
顔は机に突っ伏したままもう一度、男は呟いた。すると無機質な音は止み、代わりに返ってきたのは深いため息が一つ。
「モリアーティ、少し黙ってくれないか。気が散る」
「あぁ」
凛とした冷ややかな声にモリアーティが顔を上げれば苛立ちを含んだ、冷たさ二割増しの相方であるホームズの視線。しかし、どうやらそれ以上の会話をする気はないようで、子供のように駄々をこねるモリアーティを一瞥だけした後、すぐに視線を画面へと戻してしまう。その態度に文句を言おうと、口を開きかけたモリアーティだったが、ホームズとはまた別の背筋に悪寒が走る殺気を感じ取ったため、喉まで出かけた言葉はやむなく舌打ちへと変わることとなった。
1239