――ヴーッ
着信を知らせる緩やかな低振動におぼろげだった意識がゆっくりと覚醒していく。どうやら自分でも気付かないうちに眠ってしまったようで、机の上には試験勉強用に広げていた参考書がそのままに、スタンドライトの小さな明かりだけが真っ暗な部屋を照らしていた。目をこすりながら机に伏せていた上体を起こし時刻を確認する。現在の時刻、午前一時四十分。
――ヴーッ ヴーッ
鳴りやまない振動に少しずつスマートフォンが本の上を滑っていく。恐らくこちらが出るまでこの振動が止まることはないのだろう。真夜中のはた迷惑なコールが誰からかなど、ディスプレイに表示された名前を確認するまでもない。嘆息しつつも、自然と口元は綻んでいた。スマホを手に取りモリアーティは画面を軽くタップする。
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