リンウイ本編後、ウィスクラ未満学園都市オネキスへの道を、ツェルを乗せた馬ぞりが颯爽と走る。
雪はまばらに降る程度で視界は悪くない。予定より早く都市内へ戻れるだろう。
まだ明るい空を見ながら、ツェルは静かに息を吐いた。
学園の警備組織に所属していたツェルだったが、今は総長の次男、ウィストと共に、その長男レイスが患っている難病「精霊病」を直す薬の研究をしている。
一時は悪化するばかりだったが、幸いにも病状の進行は遅くなっており、治癒への希望を辛うじて繋いでいた。
研究の進捗は一進一退なりに、先日はじめての試薬を完成させた。
試薬の入った瓶を見ながら、安心したように顔をほころばせたウィストに
「喜ぶのは早すぎるでしょう」
と、水を差すように、冷ややかにツェルは言う。
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