待ち人来たる シュナイダーという男が自分を待ち構える姿を目にするのは今日が初めてではない。故に若林は驚きよりも、『何故シュナイダーが部屋の前に居るのか』という疑問で頭を埋め尽くされた。
背を壁に寄りかけ、両手をコートのポケットに突っ込ませるシュナイダーの目はまだ若林の存在を捉えていないようだ。恐らく、その瞳には外廊下から見える街の灯りが映っているのだろう。
そんなシュナイダーの横顔を眺めながら若林はオフに入る前に交わした会話を思い出してみるも、シュナイダーがここに居る理由となるようなやり取りが思い浮かばず首を傾げた。
手ぶらな様子を見るにまさか、シュナイダー以外の家族四人全員が不在の上で鍵を失くしてここに来た。なんて理由だったりするのだろうかと思うも、それは一番あり得ない事だと己の都合に良い妄想を鼻で笑うしかない。何故なら、シュナイダーは若林の家の鍵を持っていないのだから。
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