サークルクラッシャーネロ 刹那の熱が冷めて、脱ぎ散らかした服をまとい部屋を出ていくまでの数分間。この時間が、いつもあまり得意ではない。どんな顔で、どんな話をしたらいいかわからないから。
だから必然といつも無言になる。今日もさっさとベッド――岩の上で寝ているのとそう大差ないのではないかと思うくらい硬い――をおりてサイズの合わない服を身に着けていると、すでに冷えた肌に、いまだ裸のまま寝そべっている男の手が触れた。
「もう戻るの? ひと晩くらいこのまま寝ていったら?」
どこか媚びるような声に、「朝飯の仕込みがあるから」と素っ気なく返すのは、今日に限ったことではない。目の前の男にとってはこれが初めてかもしれないが、ネロにとっては飽きるほど繰り返した台詞だ。数日前に寝た男も、その前に寝た男も、誰も彼もが、似たような言葉と視線でネロを引きとめようとする。たった一度の関係で芽生えてしまう情、あるいは執着に似た何か。ネロは伸びてくる男の腕をほどいて、乱れた髪を軽く手櫛で整えた。
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