【炎司愛され 逆行もの】□エンデヴァー視点
〘1章〙
償えただろうか。
今際の際。目を瞑るときに浮かんだ言葉は、誰かへの投げ掛けのようで結局、己への問い掛けだった。
そうと分かったからか、……この震えた声は……夏雄か。夏雄から「結局自分しか見えてねぇな」と言われてしまった。
次に冬美が「お父さん、元気でね」と少し汗ばんだ額を布で拭ってくれた。この視線は冷だろうか?静かに側に居る。結婚も子供についても、戦いへの背中押しも、燈矢を止めたことだって。お前には本当に世話になった。
遠くからドタドタと足音が聞こえてから、力いっぱいに襖を開けた音がした。
「ハァ、ハァ……親父は?」
……焦凍か。約30年前にAFOは倒したものの、この個性社会で簡単にヴィランがいなくなるわけでもない。焦凍はあの戦いから帰還し、今もヒーローとしての活動を続けている。昨日もそれでパトロールだったはずだ。
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