【蔵不二】俺は運命を縛りつける不二周助には誰にも言っていない秘密があった。彼には物心ついた時から自分の左手の小指に結ばれる紅い糸が見えていた。といっても特段秘密にしているつもりはなかったが、きっとこんな事誰も信じてくれないだろう。よく運命の紅い糸だなんて言葉を聞くけれど、この糸が本当にそうなのかわからないまま常に結ばれるそれと日常を過ごしていた。
糸はただ小指に結ばれているだけで生活に支障はなかったが、彼にとって一つだけ嫌なことがあった……なんとなく恋ができないのだ。どんなに気になる人ができても、その人の小指とこの糸が繋がっていないことに悲しくなってしまう。いっそこんなもの見えなければ素直に気持ちを伝えられるのだろうか……そう、同じ部活の同級生である手塚国光に。
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