ジョイスのはなし「なぁハンター……」
俺が物心ついてすぐぐらいの頃に弟のハンターが生まれた。産婆さんに抱きかかえられた「何か」が気になって、産婆さんの腕の中の「それ」を一所懸命に見上げて、背伸びもした。すぐに産婆さんは俺にもよく見えるように屈んで、ぎゃあぎゃあ泣いている赤ん坊を見せてくれた。
「ほら、ジョイス。可愛い弟だろう」
可愛い弟? そんな表情で父を見上げると、父さんはほほ笑みながら、今日からお前は兄になるんだぞ、と言った。
産婆さんは立ち上がって、母さんのところへ赤ん坊を運んで行った。しばらくして、母さんがベッドから声を掛けてきた。
「ジョイス、おいで」
母さんの隣に寝かされた赤ん坊は、真っ赤でまるまるとした顔で、すやすやと眠っていた。
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