月のワルツ青白い月が輝く静まり返った誰もいないダンスホール。
この時間ならば賑やかになっているはずのクローフィ家だが、この別棟には誰もいない。
ギィ…、と扉が開く。鍵はかかっていないようだ。
「ほら、リリィこっち」
扉からおず…とリリィが覗き込む、手を引いて中に入れ扉を閉める。
「いいんでしょうか、坊ちゃん…」
「大丈夫だよ、なんかあったら僕とダンスの練習してたって言えばいいし」
自分たちの足音だけが響く。今のこの別棟にはほとんど人がいない。
「旦那様に怒られてしまいますよ」
「おじ〜さまには僕から言うからリリィは気にしなくていいよ。…ええと、こう、だったかな」
リリィの手を取りダンスのポーズの真似をしてみる。
「?坊ちゃん、僕はまだダンス習ってません…」
1072