悪夢トラウマ魔法 ロザ編
ああ、もう。最悪だ。
もう大丈夫だと思ったのに。
もうあれからだいぶ経ったのに。
目の前に立つ2人のニヤけた顔を見るだけで体が震える。背筋が凍る。音が遠く聞こえるみたいに、耳の奥でキーンと響く。
お兄さまたちが大きく見える。いや、僕の体が小さいのか。
あの頃とは違う、もう違う、のに。
「やあ、かわいいローズ」
甘ったるい声が肌を撫でるみたいにまとわりつく。気持ち悪い。
「挨拶もないの?お兄ちゃんは悲しいなぁ?」
「ふふ、ローズ。俺たちに「こんにちは」は?」
近づき目線を合わせてくる。気持ちは強く持ちたいのに体が、足が、勝手に後ずさる。
「あ、今。逃げようとしたんだ?」
いきなり髪を掴まれる。皮膚が剥がれるんじゃないかと思うくらいの痛みが襲う、つい「う、」と声が洩れた。
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