ナンとサンカイ学生時代SS「あんたってナンの話しかしないよね」
安っぽいくすんだ白いレースが付いたブラジャーのフックを止めながら、彼女は言った。ベッドの上でうつ伏せに寝転びながら煙草を吸っていたサンカイは床に置かれた灰皿に煙草を押し付けながら
「そんなことない」
と肩をすくめながら笑った。女はまるで気付いてないの?とでも言いたげに、スカートに足をくぐらせながら、わざとらしく大きく深いため息を吐いた。
少なくとも声からは他の女と同じように『ほかの女とはもう寝ないで!』を遠回しに言っているように読み取れずサンカイはーーーーそもそもそういう場合なら、ほかの男の話など、ナンの話なんかしないはずだ。ああ、面倒くさい。何かご機嫌を損ねるようなことはしてないはずだ。前に怒られたから生でやりたいんだけど、とは言ってないしちゃんと着けたし。……とにかくこういう時は黙っているのが一番だ、とばかりに薄汚れた黄色いへたったタオルケットの中に潜り込み、女に背を向けて彼女の次の言葉を待った。
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