「なんだ、あれは」
真夏の晴天の下、コスタ・デル・ソルに突如として現れた巨大な建造物を前にエレンヴィルは思わず声を出した。昨日見かけた時点では確かにそこには穏やかに凪ぐ海しかなかったはずだと首を捻っていると、近くにいたエレゼンの男性に声を掛けられた。
「お客さんもやっていくか? 常夏の魔城に!」
「魔城? ……いや、俺は」
男性の視線の先にそびえ立つそれには、多くの人々が狭い足場を器用に飛びながら登っていく様子が見受けられた。なるほど、アスレチックなのかと納得すると同時によくこれだけのものを一夜にして作ったなと感心する。
今日は調査の合間の休日ではあるが、流石にあそこに混じるつもりはない。何より折角の休みだというのに体力を消費したくはなかった。
1396