「これより、第6回ナックルジム主催ドラゴンバトルトーナメントを開始する!」
スピーカーから威勢の良い声が流れたのと同時に、期待に満ちた歓声が上がる。
「新鮮ですか。ここで聞くのは」
歓声の方向を目で追っていたダンデにネズが声をかけると、彼は髪を靡かせながら振り返り軽く頷いた。
ネズとダンデはスタジアム内にいない。彼らはトレーナーではなく裏方としてこの場にいた。
今もナックルスタジアムの屋上で、閉会式の際に空に舞う花火の準備をしていたところだ。屋上には爽やかな風が吹き、この準備も今の天気が続けば無駄にはならなそうだとスタッフ達は軽快に手を進めていく。
「今年も盛り上がりそうだな!」
ダンデは嬉しそうにそう言うと一瞬止めてしまっていた作業に戻った。手際の良い彼を見ていると不思議な気分になる。昨年まで、彼はこの場ではなくあのスタジアムの真ん中で人々の視線を集めていたのだ。それに対して今、彼を見ているのが自分だけなことにネズは違和感を覚える。しかしいつか、この状況にも慣れてしまうのだろうか、……いや。
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