願い事で終わらせたくないから八戒宅のホームシアターでおすすめの映画を鑑賞し、夕方になって帰路についた。
駅に向かう道を進んでいると、見覚えのある3人組が先にいるのが目につき、思わず声をかける。
「三ツ谷くん!」
こちらを振り向いたのはやはり、三ツ谷と妹2人だった。
三ツ谷は両腕にスーパーの袋を持ち、さらに顔にかぶるほどの笹を抱えている。
「どしたんスか?ソレ」
「七夕だからっつってマナの学童が持たせてくれてサ…」
七夕。そうか、今日は七夕だったか。
高校生ともなれば、七夕などあまり意識していない。ぬるい風にそよぐ笹の葉を見て、どこか懐かしい気持ちが蘇った。
「オレ家まで持ちますよ!」
「サンキュ、助かるワ…」
ここまでの道のりで既に疲れた様子の三ツ谷が、武道に笹を渡す。けれど、三ツ谷は首を何回か左右に鳴らすと、スーパーの袋を片手に持ち直し、反対の手でまだ幼いマナの手を取った。
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