マイカにて お前には、兄弟のうちの誰よりも素質がある。そう父は言った。
速く走れるのも、さっと木に登れるのも、天がモクマに下さった才能なのだと。
だからそれを、世の中のために、ミカグラのために鍛え、生かさなければならない。六歳になった年、マイカへ修行に出されたのは、そのためだった。
家族と離れるのは辛いけれど、天に与えられた力を持つ子供なのだから、仕方のないことだ。
本当は泣きたかったけれど、強い忍びにならなければいけないのだから、泣いたりしてはいけない。
寝床や食事はただで用意してもらえているのだ、出来るだけ、自分のことは自分でして、誰にも迷惑をかけずに生きていかなければ。
モクマは、人見知りだ。知らない人は怖いし、話しかけるのも難しい。
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