第七章 最悪な目覚め(一部抜粋)「はぁ……はぁ……っん……」
降谷は最後の追い込みとばかりに速度を速めた。額から滴れて目に入りそうになる汗を手の甲で雑に拭う。
「……はぁ……はぁ……あ、あむろさ……も、もう……」
泣きそうに揺れる澄んだ瞳が、降谷にもう無理だと訴えかけてくる。息は上がり、顔を赤く上気させ、黒い髪は汗で額や頬に張り付いている。もはや限界に達しているようだった。
「これくらいで限界だなんて口ほどにもないな」
降谷は意地悪く言い放つと、速度を少しづつ緩めていく。上がった息が整ったタイミングで完全に動きを止めた。そして、首から下げたタオルで顔の汗を拭うと、ドリンクホルダーに立てかけてあった水を取り、トレッドミルから降りた。
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