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    ひかりせい

    降志中心です。
    主に短編やドラフト版を上げたり下げたり。

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    ひかりせい

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    ファーストキス(二)の続き、第七章の一部抜粋版です。
    ※くれぐれも、なんでも大丈夫なかた向けです

    ファーストキス(一)
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16314842
    ファーストキス(二)
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19083680

    #降志
    would-be

    第七章 最悪な目覚め(一部抜粋)「はぁ……はぁ……っん……」
     降谷は最後の追い込みとばかりに速度を速めた。額から滴れて目に入りそうになる汗を手の甲で雑に拭う。
    「……はぁ……はぁ……あ、あむろさ……も、もう……」
     泣きそうに揺れる澄んだ瞳が、降谷にもう無理だと訴えかけてくる。息は上がり、顔を赤く上気させ、黒い髪は汗で額や頬に張り付いている。もはや限界に達しているようだった。
    「これくらいで限界だなんて口ほどにもないな」
     降谷は意地悪く言い放つと、速度を少しづつ緩めていく。上がった息が整ったタイミングで完全に動きを止めた。そして、首から下げたタオルで顔の汗を拭うと、ドリンクホルダーに立てかけてあった水を取り、トレッドミルから降りた。
    「国立を目指せたサッカー少年だというから、どれほどかと思えば。探偵にも体力は必要だぞ」
     隣の台で、息も絶え絶え走っていた新一にひと声かけると、柱の影にあるベンチへと移動した。
    「……朝5時から走る趣味はないですよ」
     新一は不満そうにつぶやいた。

     早朝、降谷は新一をホテル内のジムに誘った。
     この時間であれば蘭が眠っているだろうと考えたからだったが、ついつい毎朝の習慣で走り込んでしまい、それに新一を付き合わせてしまったのだ。
    「で、こんな早朝に何のようです?」
     新一はタオルで汗を拭きながら、降谷の隣に腰かけた。
    「君に協力者になってもらいたい」
     降谷はそういうとスマホを取り出して新一に画像を見せた。そこに写っていたのは一枚のメモで、こう記されていた。

    『林檎を得んとする者、アダムとイブの己がカクテルを作り復活の数字を得るべし。アダムは神殿の人柱となり、イブは舟を漕ぎ出でて無秩序な海を行かねばならぬ。汝、行く道は一つのみ。原点に戻れば奪われ、最果てに向かえば永遠に守られる』

    「なんですか? これ」
    「君の大好物の暗号だよ」

     降谷は、今の状況をかいつまんで説明した。バーで会った女は、元組織の一員でNOCの殺害に関与しているとしてFBIがマークしていた人物だった。このメモは昨夜押収したもので、その女が持っていた。この女から聞き出した情報に、FBIが追加で入手した情報をまとめると、こういうことのようだった。

     組織崩壊時に焼けたと思われた組織の核となる情報の一部が流出していたことがわかった。もともと組織内でサーバを立てて専門のチームで情報を管理していたが、グループの業績不振とともに、一部子会社で情報管理部門をアウトソーシングするようになり、そこから漏れたらしい。社外でファイルを開くとデータを壊すよう仕掛けられているため、無理に開くことはできないと思われていたが、万が一のためにファイルを壊さずに開くための専用のパスワードがあることが判明したのだ。パスワードは“あの方”と呼ばれる人物のみが知っていたのだが、万が一のためにと暗号のメモが残されていたという。暗号を解くカギになるのがコードネームを持つ人物であることまで突き止め、それらに該当する人物に接触を試みたが、手掛かりが掴めず口封じのため殺害したのだという。NOCばかりだったのは、組織崩壊後に捕縛されなかったのがNOCだっただけで、特に理由はないらしい。
     この連中は、その情報を手土産に新興組織に移る算段だったという。開発に何年もかかるような武器や薬などの情報を欲しがる組織はいくらでもあるのだという。

    「組織の情報を取得するためのパスワード、ですか。考えてみます」
    「頼んでおいてこんなこと言うのもなんだが、くれぐれも蘭さんのことを優先で」
    「わかってますよ」
     言葉とはうらはらに、新一は少年のようなキラキラとした瞳をしている。
    (蘭さん、ごめん……)
     降谷は心の中で蘭に謝罪した。

      ◇

     宮野志保の朝に二度寝はつきものだ。
     もともと朝は弱いのだが、今朝の目覚めは最悪以外の何ものでもなかった。
     爆発した髪の毛、目も腫れぼったく、クーラーのせいで喉もガラガラ。そもそも一度目が寝れていないので、寝不足で頭も痛い。
     志保はもう一度ベッドに横になる。その瞬間、寝室の扉が勢いよく開き、身支度を整えたジョディが入ってきた。
    「Good Morning 志保。お寝坊さん」
     ジョディはそう言うと、寝室のカーテンを全開にした。窓から刺しこんでくる強い光に目が眩み、志保は頭からすっぽりとシーツを被った。
    「何時?」
    「もう7時よ。そろそろ朝食食べに行かないと」
    「行かない。お腹空いてない」
    「ダメよ、朝はちゃんと食べなくちゃ」
     志保はシーツの中で首を横に振る。
    「ほーら」
     ジョディがシーツを剥ぎ取っても、志保は体を丸めたまま動かない。
    「あら、そう」
     ジョディは、腕組みをして一計を案じる。
    「なら、ミスター・アムロに起こしに来てもらおうかしら」
     彼女の提案に志保はガバッと起き上がった。
    「顔洗ってらっしゃい」
     うまくいったと満足げな顔でジョディが言うと、志保は渋々バスルームに行き、身支度を始めた。

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