地面を叩きつけるように降り注ぐ雨の音がうるさい。翠雨の節とはよく言ったものだ。曇天から落ちる雨粒は青葉を枝からもぎとらんばかりに暴力的で、とても豊穣を呼び起させるような美しい類のものではない。まだ昼間だというのに厚い雲に覆われた空は光を通さず、自然光を頼りにしている自室は薄暗い。ただ部屋の隅に立てかけた異形の槍が、未だ自分の残渣を反芻するかのようにゆらゆら光を放ち小刻みに蠢いている。この槍の持ち主はお前なのだと、そう詰められている気がして、くそったれと低く吐き捨てた言葉も止まぬ雨音に消されてしまった。
「シルヴァン、大丈夫?最近顔色が悪いようだけど」
実兄の討伐任務を終えて数節、訓練場から寮へ帰る道すがら担任教師から声を掛けられた。振り返ると変わらぬ鉄仮面がわずかに瞳を揺らしてこちらを見ている。
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