0真桐(仮文) 重厚な扉を潜った先、東京でもめったにお目にかかれないような豪奢な雰囲気が桐生を迎え入れた。
『桐生ちゃん、暇ならちょっと大阪に行かない?』
杉田ビルの備え付けの黒電話から聞こえたのは明らかな低音。その癖わざとらしい奇妙なしなを作った話し方と男である自分をちゃん付で呼ぶ人間を桐生は一人しか知らなかった。
「……風俗王か?」
『ご明察!!桐生ちゃんにどうしても連れていきたいお店があるの』
この風俗王と名乗るオカマを含めた5人の億万長者“ファイブビリオネア”と不動産バトルをしたのはついこの間のことだ。
ダメかしら?とこちらを伺う癖に、あれよあれよと日取りを決め、いつの間にか茉莉奈にも手を回していたことに桐生は関心を通り越して呆れの感情を抱いていた。
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