愛詰競射「いやぁ〜かっちゃん本気出してくるから、オレも久々に熱くなっちゃったよ」
七緒は弓道着の下の汗でびっしょりと貼り着いたインナーの、胸元をパタパタと扇ぎながらロッカーを開けた。
「そりゃ、そうだろお前にはぜってぇ負けたくな…っ!」
軽口を叩く七緒の横で、一足先に着替えの支度をしていた海斗は、ちらりと視線を動かすと、七緒の汗ばんで火照った胸元が飛び込んでくる。今までだって毎日、更衣室で着替えを共にしてきた訳で、なんら変わらない筈なのに何故か今日は胸の奥で心臓が跳ねて煩い。紛れも無く意識している、七緒を。
言葉が途中で詰まって出てこないもんで、七緒が不思議そうに顔を覗き込んでくる。まったく人の気も知らずに。
1705