四月の初旬、あたりを見渡せば薄桃色の花弁達が空を染めていくのを感じる。 出会いと別れの季節のせいか沢山の感情が入り混じってる人々がいる中で俺はただ一人、商店街を抜けてすぐの通学路を重い足取りで歩いていた。
『桜なんて見たくない』なんて我儘を誰が聞いてくれるんだろう。 待ってほしいと願っても春は止まってくれない。 何もしなくたって咲いて散るだけで褒められる桜と違い、俺はファンに向けて歌って踊って、仕事をしないといけない。 それだけで桜を嫌う理由には充分なはずなのに。
もっと他に嫌う理由がある気がしたのは、なんでだろう。
そんな事を考えながら通学路を歩いていく。 そしたら向こう側から懐かしい声が聞こえた。 俺に前を向かせてくれた大切なヒーロー。
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