くだらない夜のひと時「ファーーーーック! また負けた! チッ、もう一回やるぞストラス」
ブリッツは大きな舌打ちをして、トランプを勢いよくベットに叩きつけた。
約束の満月の夜。
情事を終えたふたりは珍しく夜の時間を満喫していた。もうかれこれ一時間、ベットの上でポーカーを楽しんでいる。正確には楽しんでいるのはストラスだけだが。始めたきっかけは──ブリッツのひと言。
キュルキュルキュルと映画のワンシーンのように過去に戻る。
ゴムを丸めてゴミ箱にシュートしたブリッツは、タバコに火をつけ大きく肺に入れてから、ふーっと煙を吐いた。しばらく考え込んだ顔をしたが、吹っ切れたのか早口で話し始める。
「来月の満月は予定があるから、こねぇぞ」
あまりにもぞんざいで己の意思をガンとして譲らない──そんな意思が声に滲む。ストラスは上半身を起こして肩をすくめた。こういう時のブリッツは何を言っても聞かないことを彼は知っている。だから彼が気持ちよく事情を話すよう誘導するのもある種努めだと思う節があった。
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