「かいちゃんごめんね〜、車出してもらっちゃって」
「いいよ、ついでだし。それにお前まだ免許持ってないだろ」
「取ろうかなあ、とは思ってるんだけどね」
「……取れんのか?」
「あ、今身長見て言ったでしょ! 今の車は座席上げられるって知ってるんだからね!」
「存じております〜。まあ、免許あったらどこでも行けるしな」
ダッシュボードに置いてあるガラスの瓶をちらりと見て、かいちゃんは言った。
私とミラーごしに目を合わせて、それからまた離れる。あ、また壁を作った。私が倒れてから、かいちゃんとは何故か薄皮一枚の距離を感じる。
「海、行きたいな」
ぽつり、とこぼしたら、今度はがっちり視線が合った。
「今から?」
「あはは、予定あるから、……今度、かな」
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