“あなたとのキスはとても甘い”
携帯を眺めていたら、突然そんな文字が流れてきた。甘ったるい少女漫画か何かの広告、健全な少年少女はそんなものに胸をときめかせるのか。
キスなんて今まで何度もしてきたが、甘いだなんて妄想は早々に辞めた方がいい。そんな馬鹿な話あるわけないだろ。
溜息を吐いて、椅子に深く腰掛ける。
好きな奴なんて、もうしばらく出来ていない。この世界に入ってから、むしろ誰もが嫌いになった。上に上がるためにしたキスも行為も全部が嫌悪の対象で、甘いだなんてとてもじゃないが有り得ない…が、そんな中で一人だけ、どちらかといえば嫌いじゃない奴が居る。
図体がデカくて、俺にやたら懐いていて。別に優しくしてやったりしたつもりは微塵もないが、慕われるのは悪い気はしない。飯を食わしてやると物凄く嬉しそうな顔をする…一度好きだと言われたが、その時はよく分からないまま、曖昧な返事をして終わらせてしまった。
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