「兄ちゃん…」
「ん?旭?何か用?」
「いや、その…」
懐かしい1年前までの兄の部屋。彼にとっては遠い5年前の自分の部屋。僕はある目的のためにそこを訪れた。時刻はとっくに11時を超えていて、本当なら僕も、肉体は15歳の兄も寝るべき時間だ。それでも兄が起きているのは、もう彼の精神は大人だからだろう。
見上げていた顔はあの時より近くにあって、それがまだ慣れない。
「また、一緒に寝て欲しくて…」
思えば、意地を張らずに接するのは本当に久しぶりだ。大人になるんだと肩肘張っている必要はなくなったけれど、またただの子供に戻るのもどうかと思って、殆ど颯への態度は変えていない。それでもこうして前みたいに兄の部屋に訪れてしまったのは、夜になって一人ベッドに横たわるとどうしても管に繋がれた青い顔の兄を思い出してしまって、眠れなかったのだ。また眠って、朝起きたらまた誰かが消えていってしまいそうで。
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