ユイトは深閑としたスオウの暗い街並を見た。
瞬きをした瞬間のそれは、すぐに正常の姿に戻り、繁華街のネオンビジョンが輝いた。降り続いた雨で路面は濡れ、極彩色の喧騒の風景を映している。上を見ればビジョン、下を見ればビジョン。だが、それもいま一度、瞬きをすると跡形もなく消え去り、黒と白のつまらない道を歩き行く人々や車だけがあった。
「今夜は少し冷えたな」
ゲンマが隣で肩をすくめて言った。ユイトはもう二度三度、瞬きをして照明のノイズを確認し異常が無いことを改めた。黙った様子のユイトを見たゲンマは少しだけ背を丸め、顔を覗き込んだ。
「どうかしたか」
「あ、いや、悪い。たまにあるんだよ、ビジョンが見えなくなることがさ」
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