龍神様の供物2龍神様の供物
体がふわふわする。目を開ければ――部屋。
そうだ、俺は龍神様の供物になって――湖に沈められて――この人に抱かれたんだ。
隣には美しい人間の姿の凪砂さまが、満足そうに眠っていた。
生きている――死ぬと思っていたのに、俺はこうやって雨風しのげるこんな立派なところで眠っていられた。今まで生きていて、幸せな時間なのは間違いない。
龍神様の役に立たなくてはいけない、そう思って、俺は起き上がってまずは顔を洗って来ようとした。そっと抜け出して歩く――ふらふらする……。
「う……」
ふらついて倒れそうになったら、ぎゅっと後ろから抱きしめられる感触がした。
「……大丈夫? 茨」
「あ……凪砂さま……」
軽々と抱き上げられ、にっこりと顔を覗かれる。そうして、思い出したように凪砂さまは目を見開いた。
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