病室にて 冬という冷たい季節、日照時間も減り体の巡りにも影響を及ぼす陰鬱な日々であった。病院で過ごしている茨は、免疫が落ちてしまったのだろうか、ここ数日風邪になってしまっている。点滴の滴が定期的に落ちて、茨の管に通って行った。私はマスクをして、持ってきた林檎を隣で剥いた。苦しそうに咳をする茨と、変わってあげられればよかった。
「……大丈夫?」
「はい、平気です……」
「……風邪には林檎、とりわけうさちゃんがいいと思う」
そういってうさぎのみみがついた林檎を、茨に差し出した。茨はそれを眺めて、すこしだけ目を光らせる。
「かわいいですね」
「……茨がそう思ってくれて嬉しいな」
「閣下に喜んでいただけて嬉しいです」
そういって茨はあたまから林檎を齧り、私の結晶を腹に収めてくれた。少食になってしまった茨が、きっと私のために嚥下するエネルギーを見せてくれている。自分が一番辛いのに、私のために頑張ってくれる茨は、昔と変わらなかった。
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