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    nicola731

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    nicola731

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    「自分のふるさとの昔話を調べてみましょう!」
    謎時空での俺モブ×道満の話です。そんなヤバイ彼氏やめて俺にしろよ道満。
    やまりさんと話した結果ヤバイ晴明さんに托卵される俺モブです。

    ある時。山間にある村の庄屋に美しい人の形をした何かが嫁いだ。庄屋が言うには、その人は山から下りてきたらしい。
     その人は鬼と見紛うほどに背が高く美しかった。雪の積もった谷間を過ぎる夜の川に似ている長い髪を流して、見上げるほどに背が高く、恐ろしく力が強かった。村人達はその人を「御寮人」と呼んでいた。
     先代から家を継いだばかりの若い庄屋が山の中で出会い、天女のように清らかで輝くように美しいその人を「ぜひ妻に」と切望したのだ。それを了承して、山を下りてきたその人は内儀となった。
     今にしてみれば恵まれた体躯と綺麗な顔をしているその人は、人では無かったのかも知れない。
     乞われて田畑を耕せば、御寮人は男の十倍は耕した。読み書きはおろか漢詩を幾つも諳んじることができた。薬学や医術にも詳しく、村人の中には命を救われた者も少なくは無い。庄屋は良い嫁御を貰ったものだと、村中の人間が頷き合った。御寮人から見れば庄屋は子供のような背丈だったが、二人は仲睦まじく、十年も経たないうちに子供を十人も作った。御寮人は畜生のように双子や三つ子を産んだ。産んだ子供はどれも美しく、父親に似ている者はいなかった。
     御寮人は自分の子供と共に村の子供達にも読み書きを教え、山の中では食料になる植物の知識を与えた。御寮人が山に入れば忽ち大きく獣のような手に一杯の山の幸を持って帰った。子供達のために山菜や果物を、夫と義両親のために猪や鹿を狩って戻った。食用旺盛な子供等からどうにか避難させた食料を村の病人に与えることもしていた。村人達は「これこそ生きた仏様なのだろう」と御寮人に向かって拝んだ。すると御寮人は酷く恥じ入り「儂なぞは仏道をも破門になった身ゆえ」と彼等に言った。

     ある時から村の周囲を大きな影が彷徨くようになった。夜のうちに、村の周りをぐるぐると歩き回っては「こうこう」と笑い、朝が来ると何処かへ消えて行く。それを見た村人の言葉によれば「大きな狐」で、それは「人家を踏み潰すほどに大きいのだ」と。村人達は大層怯えて庄屋に訴え出た。庄屋が隣に控えていた妻に「何か妙案は無いものか」と訊ねると、御寮人は真っ青な顔をしていた。具合でも悪いのかと心配すればいつものように美しい微笑みを浮かべて「なんでも有りませぬ」と答えた。唯ならぬ御寮人の様子に彼等は不安がったが、どうしようも無かった。

     村の近くに狐が出るようになった頃。また庄屋夫妻の間に子供が出来た。膨れた腹を抱えていても御寮人はよく働いた。十月十日が満ちて子供が産まれた。呼ばれた産婆は取り上げた子供を見て酷く狼狽した。父と母に似ても似つかぬ、狐のような顔をしていたからだ。
     御寮人は子供を見て、端から見ても困惑するほどに嘆いた。美しく賢い顔立ちの和子だった。それを見てどうしてそうも嘆くのか分からなかった。庄屋も子供が自分に似ていないことは気にする性質ではない。妻の産んだ子供は全て自分の子だという確信があった。妻が他の男に靡くことは無いと確信していた。
     末の子を見て嗚咽さえしていた御寮人だが、子返しをすることは無かった。それまで産んだ子と同様に育てた。相変わらず村の周りに狐が現れた。


     月の無い真っ暗な晩のことだった。夜明け前のことだった。庄屋の家から御寮人の叫ぶ声が響いてきた。それに目を覚ました隣家に明かりが灯り、村人達は怖々と、それでもあの御寮人を助けようと山鉈やら鍬やらを手にして外へ出た。真っ暗で何も見えない。不気味なほどに辺りは静まり返っていた。庄屋の家に明かりは無かった。
     村人は声を掛けながら戸を開けて中へと入る。家の中は酸鼻を極めた。子供達は末の子以外全て獣に食い殺されていた。老いた義両親も一緒に、バラバラになった四肢が辺りに散らばっていた。末の子も、御寮人の姿も無かった。庄屋は縁側から軒下に逃れて、がたがたと身を震わせて縮こまっていた。村人が何を聞いても彼は「狐が、きつねが」としか言わなかった。床には御寮人の髪がばらりと落ちていた。
     庄屋の家に駆け付けた村人達は狐の化物に御寮人も末の子も頭から喰われてしまったのだと思った。美しい御寮人を喪ったのだと。

     庄屋の家から痛ましい葬列が出て、庄屋は百歳も老け込んでしまったようだった。村人達で気が変になってしまった庄屋の世話をしていた。
     だがある時、世話をしていた村人が目を離した途端に山へと入って言ってしまった。「道満、道満」と御寮人の名前を呼んで深い山の中へと入っていってしまった。そして谷に落ちて死んでしまった。




     この話はこれでお終いです。
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