晩御飯は君のとなりでおい、ウツシ。お前あんまり食ってないじゃないか。
同僚から言われて、ウツシははたと気がついた。確かに自分の皿に乗せられたぶんを食べていない。
5月、新たにやってきた新入社員たちと春の異動で別の部署に移った面々への歓送会という名目で、同僚たちと飲み屋に来たウツシであったが、どうにも箸が進まない。同僚たちはうまいうまいと食べているけれど…。
どうした、お前いつもバクバク食ってるじゃないか、これ美味いぞ、体の調子でも悪いのか、などと口々に言われるけれど、自分でもとんと理由が分からない。
なんとなく、料理に手を伸ばす気になれなかったのだ。確かに出されたものに不味いものはないし、美味しい部類に入ると思う。だが箸を進める気にはなれなかった。
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